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    1年ぶりの石巻



    7月18日 1年ぶりに石巻の小学校をお尋ねし、子供達とリトミックの授業で楽しい時間を過ごしました。

    昨年は2年生の3クラスでしたが、今回は3年生と4年生合わせて6クラスを3・4年生合同クラス3コマでさせていただきました。


    昨年と同じ様に、ありすちゃんのお母さまがお勤めの小学校との間で段取りを組んで下さり、音大卒業後東京でピアノの先生をしているありすちゃんも都合を付けて同行してくれました。また、付属高校2年ヴァイオリン科の翔太君も一緒に行きました。


    翔太君は小学校3年生からソウルフェージュを見ていた生徒です。音楽教室入室後も副科ピアノで付属高校に入るまで見ていました。今も音楽教室に妹の香音ちゃんがいて副科ピアノを見ていますので、ずっとお母さまを含めお付き合いが続いています。バイオリンだけでなく、人間としての見識を広めてほしいとご両親が翔太君と話し合い、是非同行したい申し出てくださいました。小学校にもご相談し、今回一緒に行くことになりました。


    あいにくと当日は雨模様、仙台に近づくにつれ、さらに黒い雲が垂れこめ、雨脚も強くなりました。ありすちゃんのお父様が車で仙台駅まで迎えに来てくださり、暗い雨の中を石巻へと向かいました。小学校につくころには、土砂降りに加え雷もとどろき、お父様が小学校の玄関2メートルくらいまで車を寄せてくださったにも関わらず、びしょぬれになるほどでした。


    今回は昨年2年生の時に体験した3年生と初めてリトミックを体験する4年生を合同にしての授業です。1クラスが60人ほどになりますから、子供達ときちんとコミュニケーションが取れるようにと願っていました。そろそろ授業が始まると心の準備をしていた時に、かわいい3年生が2人手をつないで「ゆんこせんせい、おねがいします!」とお迎えに来てくれました。お陰ですっかり私の心がほぐれ、子供達と過ごす時間への期待でいっぱいになりました。


    今回は、小学校から「あの雲のように」と「ゆかいに歩けば」、翔太君が一緒ということで教科書の鑑賞にあるベートーヴェンのメヌエットのリクエストをいただいていました。翔太君のバイオリンのお披露目は昼休みに3・4年生全員合同でミニコンサートとして鑑賞する事にし、授業では「あの雲のように」を中心に進める事になりました。なかなか綺麗な声で歌うことができないので、是非どならずに綺麗な声で歌うことを体験させたいとのことでした。


    普通教室の2部屋分はある縦長の音楽室に入ると、3年生たちは「ゆんこせんせいだ!」と懐かしげに迎えてくれ、4年生は3年生たちが親しげにしていることに戸惑いながら何が始まるのかなとの表情で迎えてくれました。まずはピアノに合わせて手をたたいて、ピアノが止まったらすぐに手も止めるゲーム。3年生たちはここでもうにこにこ、げらげら大喜びです。

    次は同じことを歩いてやってみよう!4年生は3年生に圧倒され、照れながら動いています。

    続いて拍子の練習、私の合図で1拍目をたたきます。


    「あっ、4拍子だ!」

    「4拍子~!」

    口々に知っていることを答えてくれる3年生。

    3拍子や2拍子も体験し、次は自分たちで1拍目を見つける事にしました。曲はミッキーマウスマーチ。「2拍子!」「4拍子!」口々に答えてくれます。


    「じゃあ、2拍子でミッキーを弾きます」

    「今度は4拍子で弾きます」

    「両方聞いてみてどんな感じでしたか?」

    「2拍子はなんかこんな感じで(肘鉄の動作をしながら)ちょっと意地悪な感じ」

    「そっか~。じゃあ4拍子の方はどうでしたか?」

    「あのね、握手してるみたいで仲良しな感じ」

    「じゃあ、今日は皆で仲良しの4拍子でミッキーマウスマーチをたたいてみましょう!」

    みんなで4拍子をたたいてさていよいよ「あの雲のように」の3拍子に戻そうと思ったとたん、

    「3拍子のミッキーも聞きたい!」

    お~そうきましたか。ではでは・・・


    タタタンタン タタタンタン タンタタタタタ~ チャッ チャッ ~

    「わ~3拍子のミッキーだ!!」

    本当にこんなに喜んでくれると、こちらもとても幸せになります。 

    「じゃあ、おんなじ3拍子の曲を弾きますから聞いてね」とやっと「あの雲のように」に入っていきました。

    「この曲は あの雲のようにという曲です。歌の言葉―歌詞だけ読んでみるから聞いてください。  ふんわり浮かぶあの雲のように、大空で遊ぶ夢見たいな  こんな歌詞の歌です。


    私の名前のゆんこは遊ぶ雲の子供と書くのよ。だからこの歌は私の歌みたいなものです。

    綺麗~に歌ってね。では少しずつ覚えましょう!」 4小節づつ区切って、私が歌うのを真似ながら、聞きおぼえて行きました。

    みんな初めからとてもきれいな声で歌ってくれます。「あら~綺麗に歌えるのね!」その後もどなることなく、しっかりと声を出してとても綺麗に歌ってくれました。 歌を覚えてから、「さっきのミッキーマーチは元気に握手してお友達になる感じがしたのよね。今度の雲の歌はどんな感じがするかしら?」と尋ねると、 「なんかこんな風な感じ」と身体を少しスウィングさせたり、「雲だからふわふわした感じ」などと口々に反応してくれます。
    「じゃあゆらゆらしながら歌ってみましょう!」と、皆でゆらゆらスウィングしながら歌いました。

    折から雷の音がずいぶん強くなってきました。窓からは時々稲光も見えます。
    「今日はすごいお天気ね。今日の雲はこの歌とはちょっと違うみたいね。」 ト長調をト短調にして、バスで雷の轟きをトレモロで入れながら、メロディーも少しごつごつさせて弾くと、子供達はすぐに一緒に足を踏みならして歌ってくれました。

      「さあ、外はまだ雷と雨だけど、ここの教室の中は雨があがっていいお天気になりました。    お空と言えば雲だけど、そのほかには?雨があがってお日様が出てくると?」
     
      「虹!」

      「当たり!では虹を手でかきながら歌ってみましょう」

    4小節、4小節、8小節 と虹を描きながらフレーズの体験。

    「虹はみんな同じ大きさでしたか?」

    「小さいのや大きいのが有った」

    「そうね。じゃあ長くて大きい虹はもっとおおきくしてみましょう。」

    「虹は全部で幾つありましたか?」

    「3つ!」

    「大きさはどんなふうに並んでいましたか?」

    「小さいの、小さいの、大きいの」

    「そうね、では最初の小さいのは3年生が歌いましょう。次の小さいのは4年生よ。

     まずそれだけやってみましょう。」

    「大きな虹はみんなで歌いましょう」

    みんなでアンサンブルをして授業を結びました。

     

    昼休みのミニコンサートでは、メヌエットの説明をし、少しだけメヌエットを踊って見せ、

    ベートーベンの話もしてから翔太君に演奏してもらいました。

    子供達はきらきらする眼で、しっかりと翔太君の演奏する姿を見ながら聴いていました。

     


    帰りはありすちゃんのお母さまが車で仙台まで送って下さいました。途中石巻の街の状態を翔太君に見せたいとお話しすると街をドライブしてくださいました。昨年よりもっと細かく港や橋、商店街の跡などいろいろなところを回ってくださいました。

    復興は去年からほとんど進んでいないように見えます。津波で家々がさらわれ、残骸と土地だけが広がっていたところには雑草が茂り、荒れたまま放置されている時間の長さを思い、つらい気持ちになりました。


    翔太君は初めて被災地を目の当たりにして、衝撃を受けたようでした。帰りの新幹線ではこうして自分のやりたいことができる幸せを話し合いました。

     

    元気な石巻の子供達のお顔を見て、私が元気をもらいました。この子供達を守るために少しでもお役に立ちたいと思います。

    本当に小さな事しかできませんが、できる事を一つ一つ積み重ね、継続させることが大切だと心に刻みました。




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